障害福祉事業で「指定」を取るための要件は、大きく次の4つです。
(1)法人格
(2)人(人的要件)
(3)物件
(4)その他
(1)「法人格」の要件
法人格が必要ということは、個人では障害福祉事業を行うことはできないということです。法人の種類について4つの形態を見ていきましょう。
①株式会社
株式会社は、「株式」を持っている株主と、株主から委任を受けた経営者が事業を行い、利益が出た分は株主に配当します。
②合同会社
合同会社の場合は「株主」と「役員」が一致しており、迅速に動けるというメリットがあります。
③一般社団法人(営利型)
公的なイメージがありますが、株主ではなく議決権の数により理事会で採決を行って運営します。
④特定非営利活動法人(NPO法人)
設立するには10名が必要で、1年に一度、管轄行政機関への報告が義務づけられています。
以上の形態は「理念」「参加する人数」など、またメリット、デメリットなどを把握したうえで、どのような法人をつくるのか判断されるとよいでしょう。
(2)「人」の要件
この要件は「人員配置」と呼ばれるもので、サービスごとに配置基準が定められています。ここでは、各サービスの全般を掌握するポストである「サービス管理責任者」と「児童発達支援管理責任者」について説明します。
【サービス管理責任者】
サービス管理責任者とは、障害福祉サービスの提供に係るサービス管理を行う者です。訪問系、児童系、相談支援系と短期入所以外のサービスに従事します。具体的には、利用者に対するアセスメントの作成、個別支援計画の作成・評価など、サービスのプロセス全体を管理します。
基本的な要件としては、障がいを持った方の保健・医療・福祉・就労・教育の分野における実務経験が必要であるということと、「相談支援初任者研修」と「サービス管理責任者研修」の2つの研修を修了していることが必要になります。
【児童発達支援管理責任者】
児童発達支援管理責任者とは、放課後等デイサービス、児童発達支援、保育所等訪問支援などの児童を対象とした障害福祉サービスで、サービス管理を行う者をいいます。具体的には、サービス管理者と同じ職務内容ですが、保護者相談の対応などにも携わることになります。
「実務経験」は非常に重要ですので、実務経験年数については必ず最新の情報を厚生労働省や指定権者のホームページ等で確認してください。
(3)「物件」の要件
障害福祉事業所を開業する際の事業所の物件選びは非常に重要になってきます。サービスによっても違いますが、次の4点について適合させた物件である必要があります。
①都市計画法
原則として、市街化調整区域では開業できません。
市街化調整区域とは、開発行為を行わず、都市施設の整備も原則として行われない地域です。
②建築基準法
使用面積が200㎡未満の物件にしなければ、原則として建築基準法の用途変更の手続きが必要になります。また、最低でも「建築確認申請を受けていること」が必要です。
③消防法
指定申請時には、必ず消防の「防火対象物使用開始届」(指定権者によっては「消防済書」)を提出する必要があります。これは管轄の消防署員が現地確認を行った後にしか提出できません。
④条例(まちづくり条例やバリアフリー条例など)
各都道府県、市町村で制定されている条例に沿った物件である必要があります。
(4)「その他」の要件
「指定」を取るための要件として、指定権者が求めてくるものだったり、事業所が運営しやすい事柄です。
①近隣の住民への説明
特に、戸建てで、かつ住宅街で指定を受ける場合は、しっかりとした住民説明を行う必要があります。
②駐車スペースがあること
送迎サービスを行う場合は、送迎車を駐車できるスペース、利用者が安全に乗降できるスペースなど確保しておく必要があるでしょう。
③利用者の通所、従業員の通勤のことを考慮した土地
利用者が毎日通うことができる立地を選ぶことは重要です。また、従業員の駐車スペースも確認しておく必要があるでしょう。
④災害のことを考慮した立地
最近は異常気象などによる大きな災害が発生しています。ハザードマップなどで確認し、大きな河川から離れた土地を選ぶなど、安全に事業を継続していくため、よりよい立地を考えましょう。